距離感ゼロ 〜副社長と私の恋の攻防戦〜
「ハーイ!セリーナ。会いたかった」

待ち合わせのレストランに到着すると、ダグラスがガバッと芹奈に抱きついてハグをする。

あれ、日本語?と思いながら、芹奈もにこやかに挨拶した。

「こんばんは、ダグラスさん。先日は美味しいお料理をごちそうさまでした」
「どういたしまして。今度は二人で食事しましょ」

そう言ってダグラスは、芹奈と頬を合わせてチークキスをする。

「おいこら、ダグラス。ここは日本だぞ?」

翔が野太い声で言い、芹奈からダグラスをベリッと引き剥がす。

「What? I can’t understand Japanese.」
「嘘つけ!」

目くじら立てる翔を無視して、ダグラスは芹奈の肩を抱き、店内へと入った。

「わあ、素敵なお店ですね。キャンドルの灯りが綺麗で」
「でしょ?君の美しさには敵わないけどね」

おいこら!予約したのは俺だぞ?と後ろから翔が声を張るが、ダグラスは気にも留めない。

芹奈は立ち止まって翔を振り返った。

「副社長、今夜はこんなに素敵なところにご招待いただき、ありがとうございます」

途端に翔は、プシューッと蒸気が抜けたように頬を緩める。

「あ、うん。気に入ってもらえて良かった」

気を取り直して咳払いすると、「予約した神蔵です」とスタッフに告げた。
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