距離感ゼロ 〜副社長と私の恋の攻防戦〜
抱き枕かミーアキャット
村尾が出て行った部屋で、翔はどうしたものかと芹奈を見つめる。

すぐに目を覚ませばいいが、ずっと眠ったままなら?
少し経っても起きないようなら、起こして自宅まで送ろうか?

芹奈はソファにもたれて、ぐっすりと眠っている。

(疲れが溜まってたんだろう。このままゆっくり寝かせてやりたい)

そう思い、芹奈を抱き上げてベッドに運んだ。

もう何度目だろう?こうして芹奈がベッドで眠るのをそばで見守るのは。

優しく頭をなでて思い返す。

今までの自分では考えられない。
好きな女性とこんなシチュエーションになっても、手を出さないなんて。

いや、そもそもこんなに誰かを好きになったことなど、あっただろうか?

いつもなんとなく相手に言い寄られ、流されるまま気軽につき合ってきた。
海外に移住してからは特にそうだ。

(俺って、ひょっとして恋愛初心者なのか?)

告白などしたことがないし、どうすればいいのかも分からない。

(情けないな。けど、里見さんのことは絶対に諦められない)

強引に抱きしめて奪いたいが、それ以上に大事にしたい。

翔は愛おしそうに芹奈を見つめながら、サラリと芹奈の髪をすくい、そっと口づけた。

それだけで胸がキュッと締めつけられる。

(ははっ、完全に恋愛ビギナーだ。でも悪くない)

一歩一歩、彼女を好きな気持ちを噛みしめながら近づいていきたい。
大切に大切に触れていきたい。
そばで優しく見守り、いつの日か想いを伝えよう。
心から君が好きだと。

翔は微笑みながら、ただひたすら芹奈の髪をなでていた。
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