パーフェクト・フィグ
医学生時代からの同期であり、
この病院ではそこそこ有名な、
いや、変人としてはかなり有名な消化器外科医。
今は色々あってアメリカにいる男が
日本時間の早朝からしてきた連絡は、
実に中身のなく、どうでもいいこと…だった。
『いやね?
仲良しのICUの子に、昨日たまたま連絡したら
まっさんの話が出たものだからねぇ』
「だからなんだ」
スピーカーにしたスマホを
キッチンのカウンターに置いて
雅俊はグラスに飲み水を汲んだ。
あまりの勢いに、白いTシャツに水滴が飛ぶ。
『ちょっと、冷たくない?
だいたい彼女ができたら一番に
俺に報告するって…』
「言ってない」
『もぉー』
「仕事なんだ、切るぞ」
『あ、待って待って!
もう一つだけ!』
こんな無駄な時間のために
早起きしたことがあほらしい。
いつものコーヒーのドリップを開けて
その香りを嗜みつつ、
ポットにお湯を入れてスイッチを押した。
『そのICUのナースがね、
実はまっさんの隠れファンならしくて、
今度飲みに行きた…』
男の言葉が、
最後まで雅俊に届くことはなかった。
届く必要がなかった。
そう判断して、
雅俊は電話を切ったに過ぎなかった。