パーフェクト・フィグ


すみれはようやく前倒しにしていた
小さな体を起こして言った。


「ねぇ、これなに?」

「いちじく」

「これが?
 どこにもいちじく君が見えないけど」

「まだそこに植えたばかりだからな。
 来年の今頃には実るんじゃないか」

「家庭菜園とかするタイプなんだ」

「…ぁ」


フライパンに豚肉を入れる手が滑った。

すみれはもう一度いちじくの葉に
顔を近づけた。

それからまるで
ペットを見るかのような眼差しで言った。


「私、アメリカにいたときのあだ名、
 この子だったよ」

「あだ名がいちじくか?」


雅俊が鼻で笑うも、
すみれは「うん」と冷静に答えた。


「いちじくはフィグ。
 パーフェクトフィグって、呼ばれてた」


< 53 / 141 >

この作品をシェア

pagetop