青の葉の、向かう明日。
3学期は自由登校だから、私は週2日登校して残り3日は家と塾で勉強していた。

毎日のように一緒に塾に行こうと誘ってくれていた清澄くんは私と晴くんに気を遣ってか、全く話しかけて来なくなった。

それが少し寂しかったり、

明ちゃんのことで落ち込んだり…。

そんな調子で受験に臨まなければならないなんて、と僻んでいると、お日様が顔を覗かせた。


「なーに辛気臭い顔してるんだよ?」

「晴くんお疲れ様。今日はもう前日だから塾ないから一緒に…」

「帰るけど、その前に寄ってこ。やっぱり最後は神頼みだ」


いつものようにバスに乗り、揺られること1時間。

私たちの生まれ育った町に帰ってくる。

海に近いこの場所には海神様を祀った神社があり、私たちは幼い頃から大事なことの前にはここで拝んできた。

もはや習慣みたいなものだ。

学問の神様ではなくてもいつも1番近くで見守ってくれていたのだからご利益はあるはず。

最初に奇跡的にあった5円玉を投げ入れ、

二礼二拍手一礼。

受験無事合格しますように。

それと…

私を守ってくれた2人にも

幸せが訪れますように。

ううん、

私が幸せを分けてあげられる方法を教えてください。

そう、願った。

あまりにも長く目を瞑っていたから、晴くんに背中をツンツンされた。


「有は欲張りだな」

「しょうがないじゃん。色々…願いたかったんだ」


私がそう言うと、晴くんがすっと手を伸ばし私の右手を包み込んだ。


「大丈夫。有はなんも悪いことしてない。神様はちゃんと見てくれてる。最後はきっと丸く収まる。有の好きなハッピーエンドだ」

「そう…だよね。分かった。私、信じる。信じてもらった分、ちゃんと信じ返す」


それがきっと2人への恩返しだ。


その日、私は準備を終えると早めに就寝した。

夢にはお腹が痛くなって途中退席する私が出て来たけれど、実際にはそんなことにはならず、無事共通テストを終えることが出来たのだった。

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