外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
「一樹君はこういう場に慣れてるじゃない」

「まぁ、父の関係で出席する機会はありますけど」

「けど?」

 耳打ちするジェスチャーに姿勢を傾ける。ハイヒールのお陰で彼の唇がいつもより近い。

「近藤様に挨拶をしたらここを抜け出しませんか?」

「えぇ?」

「実は真琴さんだけに提供するデートコースを用意したんです。必ずご満足頂けると思いますよ」

 自然な手つきで腰を抱かれ、わたしは考える真似して顎を撫でてみた。

「コースの詳細を教えてくれない? 詳細を知らないと了承しかねるよ」

「なるほど」

 彼の腕に力が入る。それから声音をたっぷり湿らせて囁く。

「詳細は着いてからのお楽しみです。大郷百貨店の外商部員の提供が信じられませんか?」

「そうねぇ」

 答えは決まりきっているものの、遅れてやってきた恋人を焦らす。

「いっそ拐ってしまいましょうか」

「あら、そんな大胆なこと出来る?」

「お姫様抱っこ、兄にはさせたのでしょう? 俺にもさせて下さいよ」

 彼の足元が2人きりになれる場所へと誘う。

 いわゆる育ちって何処に出る? ずばり『靴』だと思う。わたしは彼のビジネスシューズをみて頷いた。


おわり
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