外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
「会社の創立記念パーティーでね、あまり派手な事はしたくないんだが」

 さっそく案内に目を通してみる。

「わぁ! 会場では近藤様が世界各地を回って集めたコレクションを拝見できるんですね?」

「コレクションと言ってもーー靴だよ?」

 ニコッと微笑む近藤様。

「わたしが何より好きな物です。お誘い、ありがとうございます! 必ず伺います!」

「あぁ、お待ちしてるよ。当日は美味しい料理を用意しておく。お腹いっぱい食べてくれ」

(やっぱり痩せたのかな? というより、やつれたのかも)

 近藤様を見送り、脇の姿見へ視線を流す。

 花岡君が抜けた分の補充要員はおらず、売り場へ立つ機会が増えた。もちろん担当売り場で接客をするのは嬉しいものの、気掛かりはある訳で。

「花岡さんったら、いっつも忙しい、忙しいって言って!」

 平場から拗ねる声がする。すぐさまわたしの足は私語を注意する建前でそちらへ向かう。

「すいません、本当に時間がなくて」

「外商部へ移動したのは知ってますけど、休みはちゃんとありますよね?」

「休みの日は勉強していて、お客様に呼ばれる時もあるので」

 先にわたしを見付けたのは花岡君。スーツの裾を引っ張られる様子を目撃され、露骨に焦る。

「あ、あぁ、お疲れ様です。深山さん」

 彼はわたしを先輩と呼ばなくなった。

「お疲れ様です」

 そして、わたしも花岡君に敬語で接するようになる。

(あ、なんだか胃が痛い)
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