外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
「そちら、使って頂けてるみたいで良かったです」

「真琴ちゃんからのプレゼントだもん」

「プレゼントという程ではないですが」

 靴を丁寧に扱ってくれるのは嬉しい。日頃の手入れを欠かさなければこの先、彼なりの経年変化をしていく。
 やはり靴は履いてこそ、だ。

「……真琴ちゃん、疲れてる?」

「分かります? お客様にも指摘されてしまって。食事はしっかり摂っているんですよ?」

「眠れてるの?」

 それには曖昧に傾げておく。

「まぁ、悩みの発生源が心配するのもおかしいか」

「悩みの発生源って、ふふっ」

 なるべく淡々と。表情を変えず話をしていたものの、そんないい草に吹き出す。

「確かに亮太さんは悩みの発生源というか、頭痛の種とでも言うんでしょうか? あぁ! トラブルメーカーですかね?」

 顎に手を添えて持論に頷いた。

「うわぁ〜随分はっきり言うなぁ。でも考えてみたら真琴ちゃんはずっとこんな感じ。変に持ち上げたり、理想を押し付けてこない」

「……亮太さんはお客様だから」

 従業員通路口の前まで来て、彼へ振り向く。

 幸いここまで擦れ違う人は居なかったが、あの扉を開いたらそうもいかない。警備員より亮太のファンが出待ちをしているという報告が上がっていて、厳戒態勢が敷かれている。

「お先に失礼します。ドラマ撮影、頑張って下さいね」

「頑張ったら観てくれる?」

「はい」

「ん、ありがとう。実はここで撮影するようになって、考え方が少しだけ変わったんだ。真琴ちゃんのお陰だと思う」
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