外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
「役作りのお手伝いが出来た、という事でしょうか?」

「うん、お礼をしたいくらい参考になった」

「それは良かったです。お礼など要りませーー」

 言い掛けて花岡君の顔が過った。
 スライドショーみたく様々な笑顔が浮かぶ。

(きっと2人は仲違いしたままだろう)

 兄弟喧嘩に巻き込むなと言いつつ、彼等の関係修復を願う。これが余計なお節介だと分かっている。

(それでも、このままにしてはおけないよ)

「ストールを……」

「ん?」

「花岡君へストールを返してくれませんか?」

「一樹に?」

「借りたままになっていて」

「そんなの真琴ちゃんが」

 わたしから返せばいいじゃないか、亮太は言いたかったはず。けれども語尾を潰す。
 彼は佐竹さん経由で花岡君の移動を承知している。そのうえ、わたしと花岡君の関係修復が絶望的なのも把握している。

(だからこそ、兄弟には仲直りして欲しいんだ)

「明日も撮影ですか?」

「う、うん」

「それならお持ちします」

「悪いけど僕は一樹と仲良くするつもりない。僕らには確執があってね」

 言い訳など言わせない。わたしは鞄から携帯電話を取り出すとドラマの宣伝アカウントを開き、突き付ける。

「ドラマの原作小説読んでますっていう投稿ですが、ここに載っている栞。花岡君から貰った花束で作ってません?」

 押し花で栞を作成する健気さを想像出来ないが、偶然の一致とは考えづらい。

「あぁ、これ。スタイリストに頼んだら作ってくれた。母へ贈られた花だしね、捨ててしまうのは忍びなかったんで」

 意外と誤魔化さない。素直に疑問を解消してくれる。
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