外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
「真琴が顧客情報を漏洩しそうになって処分される予定だったけど、花岡君の移籍で丸く収まったって話じゃないの?」

 瞬間、目の前が真っ暗になる。

「真琴? ねぇ、聞いてる?」

「ーーまさか、佐竹さんがそんな風に言った?」

「佐竹さんと花岡君がコソコソしているのを偶然耳にしただけ。真琴のやつれ方といい、花岡君の外商部での不遇な待遇を見たら信ぴょう性があるのかもと」

「花岡君、どんな扱いをされてるの?」

「佐竹さんの下で雑用やらされ、対応が難しいお客さんの御用聞きばかり。あんなのパワハラよ!」

 花岡君が余所余所しかった本当の理由、それは火の粉をこちらへ寄越さない為だったのか。

「ねぇ、しかるべき対応を取ろう? 佐竹さんの罵詈雑言は録音してある。真琴が情報漏洩するはずない、本当はしてないんでしょう? 仮にそういうミスしたにしろ、花岡君を差し出して帳消しにしない!」

「……わたしを信じてくれるの?」

「もう! 何年付き合ってると思ってる? 真琴がそんな人間ーー販売員じゃない事、一緒に働いてれば分かる!」

「花岡君は一言も相談してくれなかったよ。全然知らなないまま、自分だけが大変と嘆いてた。ごめんなさい」

「そういうのは本人に言ってあげたら? まだ会社に居ると思う。バックヤードで紳士靴を探してるはず。電話したのは彼をサポートしてあげて欲しいのもあったからよ」

「ーーありがとう、本当にありがとう」

 佐竹さんが秘密裏に仕組んだ罠へ陥らずに済んだのは花岡君や同期のお陰だ。
 1度は真っ暗になった視界に温かい光が差し込む。

 職務に愚直に取り組み、お客様への感謝を忘れないよう努めた一方で同僚に対しての感謝を怠ってしまった。

(わたしは1人で働いているんじゃない。皆で働いているんだ)

 初心に返り、頷く。

(わたしは1人じゃない! 支え合える仲間がいる。支えたい人がいる)
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