外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
兄貴がアイドルをやる事、母親の姓を名乗るのも昔みたく熱量を持って怒る気になれない。
はっきり言って兄貴の自由奔放さに構っていられる程、暇じゃなくなったんだ。
百貨店(ここ)の仕事は忙しい。毎日変化があり、刺激的でやり甲斐がある。計画より随分早く外商部へ配属されたものの、これは真琴さんによる教育の賜物。彼女なくして俺の販売員人生は始まらなかっただろう。
ーー履いているビジネスシューズを見る。
俺に関して怒りは覚えないが、兄貴の真琴さんへの態度は未だ燻る。
真琴さんが大ごとにしないと言うのであれば、俺が騒ぐのは宜しくない。
宜しくないのだが。
(やっぱり兄貴が好きなんだろうなぁ)
気付けば作業が滞って、真琴さんについて考えている。
(ダシに使って、掻っ攫われるなんて情けない)
兄貴は素の自分を見せ、俺は格好つけてばかり。よく思われようと空回って真琴さんを誰よりも傷付けてしまう。
(あぁ、格好悪すぎて、合わす顔が無い)
(でもーー会いたい)
(会いたい!)
「花岡君!」
その時だった。1番聞きたくて、聞きたくない声が響く。
「深山、さん?」
恐る恐る振り向けば、ロイヤルブルーを羽織った彼女が立っている。
「深山って呼ばないで!」
今にも泣き出しそうな顔をして、少しでも振動を与えれば零れそう。
「ーーあ、あぁ、じゃあ先輩?」
慎重に言葉を選ぶ。
「先輩って呼ばないでよ!」
「えぇ、そんなぁ」
大袈裟に困惑するが笑ってくれず。
「わたし、今はプライベートの時間だから」
俯いた拍子、ポロポロと涙が落ちていく。
真琴さんの様子は言わずもがな、おかしい。かなり動揺しているみたいだ。
はっきり言って兄貴の自由奔放さに構っていられる程、暇じゃなくなったんだ。
百貨店(ここ)の仕事は忙しい。毎日変化があり、刺激的でやり甲斐がある。計画より随分早く外商部へ配属されたものの、これは真琴さんによる教育の賜物。彼女なくして俺の販売員人生は始まらなかっただろう。
ーー履いているビジネスシューズを見る。
俺に関して怒りは覚えないが、兄貴の真琴さんへの態度は未だ燻る。
真琴さんが大ごとにしないと言うのであれば、俺が騒ぐのは宜しくない。
宜しくないのだが。
(やっぱり兄貴が好きなんだろうなぁ)
気付けば作業が滞って、真琴さんについて考えている。
(ダシに使って、掻っ攫われるなんて情けない)
兄貴は素の自分を見せ、俺は格好つけてばかり。よく思われようと空回って真琴さんを誰よりも傷付けてしまう。
(あぁ、格好悪すぎて、合わす顔が無い)
(でもーー会いたい)
(会いたい!)
「花岡君!」
その時だった。1番聞きたくて、聞きたくない声が響く。
「深山、さん?」
恐る恐る振り向けば、ロイヤルブルーを羽織った彼女が立っている。
「深山って呼ばないで!」
今にも泣き出しそうな顔をして、少しでも振動を与えれば零れそう。
「ーーあ、あぁ、じゃあ先輩?」
慎重に言葉を選ぶ。
「先輩って呼ばないでよ!」
「えぇ、そんなぁ」
大袈裟に困惑するが笑ってくれず。
「わたし、今はプライベートの時間だから」
俯いた拍子、ポロポロと涙が落ちていく。
真琴さんの様子は言わずもがな、おかしい。かなり動揺しているみたいだ。