落ちこぼれ悪魔の扱い方
「こ、高坂? あ、あの、少し、離れてくれるか?」
与崎がぎこちなく言うと、高坂は「あら、どうして?」と厚い唇を尖らせる。
「折角会えたんだから、もう少しこのままでいましょうよ。律君も、一緒にどう?」
「アンリ先輩、あんまりいじめちゃ可哀想っすよ。ひとみ先輩は女の子に弱いみたいすから」
高坂を直視できずに顔を手で覆う与崎を、灰田は面白そうに見つめた。
「灰田……高坂をどうにかしてくれるか」
与崎は羞恥のあまり息も絶え絶えになりながら、何とか声を振り絞る。
しかし灰田はニヤニヤするばかりで、一向に動こうとしない。
「ちょっと、あたしが悪者みたいじゃない」
高坂の心外そうな声を聞いて、その場にいた悪魔は一斉に笑い出した。
平和で朗らかな雰囲気。
いつもの単調ながらも刺激的な日常に戻れたことが、与崎には堪らなく嬉しかった。
そこまで思い出して、与崎は長く息を吐いた。
鮮やかな回想から戻ってくると、ここはモノクロどころか黒一色の闇だ。
「要領悪い、か……」
灰田が吐き捨てた言葉が、まだ与崎の心にしぶとく引っかかっている。