落ちこぼれ悪魔の扱い方
美弥は慌てて口の中のものを飲み込んでから、「酷いことって」と軽く笑った。

「そんなの、言われるまで忘れてたよ。気にしてもないし怒ってもないから、安心して」

咲子はまだ何か言いたそうだったが、「そっか」と言って貼り付けたような笑みをつくる。

まだ目は赤かったが、涙は引いている。

ひとまず教室での大泣きは防げたようだ。

「そうそう、全然何にもないから。上の空だったのは、最近寝不足だったせいかな?」

「寝不足なの?」

「勉強が終わらなくて。いやー、学生は辛いなあ」

ちょっと白々しいかもしれないと思ったが、今さらどうすることもできない。

美弥はダメ押しで「早く寝なきゃね」と乾いた愛想笑いを浮かべた。

「……体調、気を付けてね」

咲子はそう言って、美弥と同じようにニコニコしていた。

……ほんの少しだけ、哀しげな笑顔だったが。


< 69 / 325 >

この作品をシェア

pagetop