落ちこぼれ悪魔の扱い方
一瞬何が起きたか分からなかったが、他のチームの女子がペコペコしながら駆けよって来たのを見て大体理解した。

バレーボールが頭に直撃したらしい。

「ごめんね! 大丈夫だった!?」

ボールを当てた女子生徒が悲鳴のような謝罪をしてくる。

美弥は顔を仰け反らせて金切り声から逃げつつ、「大丈夫」と本日何度目かの愛想笑いをした。

「美弥ちゃん!」

 咲子もすぐに駆けつけてきた。

「危ないよ、ボーッとしてちゃ!」

「ごめんね心配かけて。でも、大丈夫だから」

咲子は「大丈夫って……」と頬を引きつらせる。

「一応保健室行こうよ。私もついてくから」

「そんな大事じゃないと思うけどなあ」

それにこの後、もう一試合あるのだ。

今抜けたら、チームのメンバーに何を言われるか分かったもんじゃない。


それを伝えても、咲子は聞き入れてくれなかった。

「何かあったら大変でしょ。ほら、行こ?」

咲子が言うと、女子生徒は「私、先生に報告してくるね」と体育館の中央へ走っていく。

これで保健室に行く以外の選択肢がなくなってしまった。

「……分かった」

咲子に手を引かれ、美弥は渋々体育館を離れた。


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