落ちこぼれ悪魔の扱い方
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「あら、咲子ちゃん。また転んで怪我したの?」
出迎えてくれた保健室の先生は、そう言って眼鏡の奥の目を丸くした。
咲子は「いえ、今日は違くて」と慌てて否定する。
貧血、病弱、間抜けと揃い踏みの咲子は体調不良と不注意による怪我が多く、保健室の常連。
保健室の先生とも顔見知りなのである。
「友だちの付き添いです。バレーボールがぶつかっちゃって。ね、美弥ちゃん?」
「あ、どうも。二組の前原美弥です」
咲子に促され、美弥は慌てて自己紹介した。
「前原……さんね。はいはい、とりあえず座って」
先生はそう言って近くの椅子を指差した。
「ボールが当たったんですって? 大変だったわね。どこに当たったの?」
美弥は椅子に座りながら、「えーっと、後頭部です」と答えた。
「そう。頭ってなるとちょっと心配ね。見せてくれる?」
美弥の後頭部を簡単に確認すると、先生は言った。
「腫れてはいないみたい。まだ痛かったり、気持ち悪かったりする?」
「いや、そういうのはないですね」
「じゃあ氷嚢だけ渡しておくわね。家に帰ってから体調がおかしくなったら、病院に行っ……」
そこで先生は言葉を止め、不思議そうな顔をする。
廊下から、ドタドタという大きな足音が聞こえてきたのだ。