そのモラハラ彼氏、いらないでしょ? ~エリート御曹司の略奪愛
「センセ、一気飲みは……! それアルコール高いやつ! テキーラですよ!?」
「ちょっとだけじゃないですかぁ」
しかし、グラスをとんとテーブルの上に置いたら、急に視界がぐらつき、思わず突っ伏した。
「先生、大丈夫ですか」
「大丈夫です。ちょっとだけ、静かにしてれば落ち着きますから……」
頬が熱くて、ドクンドクンと脈打っているのがわかる。深酒はしたことがなかったが、これが酔っぱらうということなのだと、妙に納得するものがあった。
「――今日は会ったときから、元気なかったですよね。無理に笑ってるみたいでしたし。何かあったんですか? 差し支えなければ」
潤がスタッフに呼ばれて向こうへ行ってしまったからか、陣が低く穏やかな声で尋ねてきた。
相手の属性を考えたら、プライベートの悩みなんて口にするべきではないのだ。でも、酔っていないつもりでも、しっかり酒で舌が軽くなっていた。
「……やなものを見ちゃったんです」
「やなもの?」
「出張に行くって言ってた彼氏が――表参道で、女の人とデートしてました……」
「え――?」
体を起こし、お冷のグラスを頬に当てたら冷たくて気持ちよかった。
「見間違いとかじゃなくて?」
「見間違えないですよ。三年くらい付き合ってる人ですから。それに、私のあげたコートを着てたし……」
せっかく忘れていたのに、やっぱり瞼の裏にあの光景がよみがえってくる。いくら人と話そうと酒に逃避しようと、そうそう衝撃の記憶は消えてなくならない。
「九州に出張って言ってたんです。私は表参道にはめったに行きませんけど、行動範囲の青山が目と鼻の先なのに、嘘までついて近隣でデートするなんて、詰めが甘すぎると思いませんか……」
どうせ嘘をつくなら、徹底的にバレないようにするべきではないだろうか。
「いや、まあそれはそうなんですが、裏切ってることを隠したまま付き合い続けるって、一言で言って最悪じゃないですか。早々に発覚してよかったと思いますけど」
「私、どうすればいいんでしょうね……。明日、彼が帰ってきても、何食わぬ顔で出迎えるべきですか……」
ぼやいたら、陣が固まった気配がした。
「――もしかして、同棲してるんですか?」
「はい。かれこれ、二年半くらい? 出張と嘘ついて女性と表参道を歩いてたのは、浮気と断定してもいいんでしょうか……」
氷が溶け、グラスの底に溜まった水を喉に流し込んでから、七瀬はふたたびカウンターに突っ伏した。
陣が何か答えてくれた気がしたが、その答えを頭が理解する前に意識が遮断された。
心が乱れていると、なぜかお酒の回りも早いようだ。
「ちょっとだけじゃないですかぁ」
しかし、グラスをとんとテーブルの上に置いたら、急に視界がぐらつき、思わず突っ伏した。
「先生、大丈夫ですか」
「大丈夫です。ちょっとだけ、静かにしてれば落ち着きますから……」
頬が熱くて、ドクンドクンと脈打っているのがわかる。深酒はしたことがなかったが、これが酔っぱらうということなのだと、妙に納得するものがあった。
「――今日は会ったときから、元気なかったですよね。無理に笑ってるみたいでしたし。何かあったんですか? 差し支えなければ」
潤がスタッフに呼ばれて向こうへ行ってしまったからか、陣が低く穏やかな声で尋ねてきた。
相手の属性を考えたら、プライベートの悩みなんて口にするべきではないのだ。でも、酔っていないつもりでも、しっかり酒で舌が軽くなっていた。
「……やなものを見ちゃったんです」
「やなもの?」
「出張に行くって言ってた彼氏が――表参道で、女の人とデートしてました……」
「え――?」
体を起こし、お冷のグラスを頬に当てたら冷たくて気持ちよかった。
「見間違いとかじゃなくて?」
「見間違えないですよ。三年くらい付き合ってる人ですから。それに、私のあげたコートを着てたし……」
せっかく忘れていたのに、やっぱり瞼の裏にあの光景がよみがえってくる。いくら人と話そうと酒に逃避しようと、そうそう衝撃の記憶は消えてなくならない。
「九州に出張って言ってたんです。私は表参道にはめったに行きませんけど、行動範囲の青山が目と鼻の先なのに、嘘までついて近隣でデートするなんて、詰めが甘すぎると思いませんか……」
どうせ嘘をつくなら、徹底的にバレないようにするべきではないだろうか。
「いや、まあそれはそうなんですが、裏切ってることを隠したまま付き合い続けるって、一言で言って最悪じゃないですか。早々に発覚してよかったと思いますけど」
「私、どうすればいいんでしょうね……。明日、彼が帰ってきても、何食わぬ顔で出迎えるべきですか……」
ぼやいたら、陣が固まった気配がした。
「――もしかして、同棲してるんですか?」
「はい。かれこれ、二年半くらい? 出張と嘘ついて女性と表参道を歩いてたのは、浮気と断定してもいいんでしょうか……」
氷が溶け、グラスの底に溜まった水を喉に流し込んでから、七瀬はふたたびカウンターに突っ伏した。
陣が何か答えてくれた気がしたが、その答えを頭が理解する前に意識が遮断された。
心が乱れていると、なぜかお酒の回りも早いようだ。