そのモラハラ彼氏、いらないでしょ? ~エリート御曹司の略奪愛
 日曜日に、名古屋スタジオのベテランインストラクターのクラスがある。めったに受講できない機会なので、是非とも受けてきたい。
 言い淀んでいたら、宗吾が察したようだ。

「仕事じゃないのに、それでもまだヨガやるんだ? その宿泊費は経費にならないでしょ? クラス受けたいなら、こっちでやればいいじゃん。東京の方がスタジオの数も多いのに」
「その先生、名古屋でしかクラス持ってないんだ。私が受講するのは研修になるし、経費にはできると――」
「男?」

 あからさまに不機嫌になった宗吾ににらまれ、首をぶんぶん横に振る。
 仮に男性講師だとしても、講師の性別など無関係なのに。まさか、浮気目的だとでも思われているのだろうか。

「女性の先生だよ。宗吾さんも、今日はプライベートの延泊だったんだよね……?」

 これは言ってはいけないと思いつつも、自分だけ難色を示されるのに納得がいかなくて、つい反論してしまった。
 そもそも七瀬がいてもいなくても、日曜日は頑として外出などしないのに。

「俺は仕事帰りのリフレッシュだ。七瀬のはただの遊びだろ? 同列にできない」

 カチンと来たが、結局、黙るしかなかった。もう修羅場はこりごりだ。

「だいたい、七瀬の遊びのために俺の食事がなくなるのに、そこは心配しないの?」

 一瞬、イラッと感情が波立ったが、深呼吸をしてそれを治める。感情で相手に物を言うのは非暴力に反している。

「――じゃあ、食事の準備を一緒にしない? 冷凍しておけば……」
「なんで俺が作らなきゃいけないんだ。それは七瀬の仕事だろ?」
「え、ちょっと待って。私は料理が嫌いじゃないし、宗吾さんは仕事で夕飯の準備が難しいからやってるけど、一緒に協力してやろうって、最初に――」

 深呼吸も無駄になり、結局、物を申してしまった。なるべく感情的にならないよう抑えたつもりだが、やっぱり不満は出てしまっていた。
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