そのモラハラ彼氏、いらないでしょ? ~エリート御曹司の略奪愛
ため息をつきそうになったときだ。
「席、空いてますか?」
下向きになっていた七瀬の視界に、スーツを着た男性が近づいてきたのが見えた。
宗吾が戻って来たのかと思い、期待に顔を上げたのだが、そこに立っているのは宗吾ではなく、グラスを片手に持って微笑むサラリーマンだ。
今の顛末を見て、ナンパ目的で近づいてきた人かもしれない。やや警戒しつつ背筋を立てたのだが、彼の顔に見覚えがあり、目を見開いた。
「奇遇ですね、七瀬センセー」
「あ……っ、陣さん!」
三門陣は、毎週、火曜と木曜の早朝クラスを受講してくれている生徒さんだ。
ヨガスタジオでは、講師もスタッフも、生徒も下の名前を呼んでいる。早朝から受講してくれる男性は少ないので、七瀬にとっては印象深い生徒さんなのだ。今朝もスタジオで会っている。
レッスンの帰り際にいつも彼のスーツスタイルは見ているが、スタジオの外で出会うとまた新鮮だ。
背がひときわ高く、前髪をかきあげたアップバングが彼の鋭く引き締まった顔立ちを引き立てている。
青山近辺には大企業のオフィスも多いし、値踏みするつもりは毛頭ないのだが、誂えたとしか思えないスーツやぴかぴかに磨かれた靴から、エリートの雰囲気がふんぷんと漂っていた。
宗吾よりもいくつか年上だったはずだが若々しく、内面の落ち着きが外見にも如実に表れている。
「ここ、座ってもいいですか?」
「あっ、どうぞ。……みっともないところ、見られちゃいました?」
彼氏との揉め事を生徒さんに目撃されてしまうなんて、かなり恥ずかしい。
「すみません、のぞき見趣味があるわけじゃないんですが、七瀬センセーが入って来たからつい注目してしまいました」
さっきまで宗吾が座っていたソファに腰を下ろした陣は、ウェイターを呼んで先客の飲みかけだったグラスを下げさせると、自分のグラスを掲げた。
「席、空いてますか?」
下向きになっていた七瀬の視界に、スーツを着た男性が近づいてきたのが見えた。
宗吾が戻って来たのかと思い、期待に顔を上げたのだが、そこに立っているのは宗吾ではなく、グラスを片手に持って微笑むサラリーマンだ。
今の顛末を見て、ナンパ目的で近づいてきた人かもしれない。やや警戒しつつ背筋を立てたのだが、彼の顔に見覚えがあり、目を見開いた。
「奇遇ですね、七瀬センセー」
「あ……っ、陣さん!」
三門陣は、毎週、火曜と木曜の早朝クラスを受講してくれている生徒さんだ。
ヨガスタジオでは、講師もスタッフも、生徒も下の名前を呼んでいる。早朝から受講してくれる男性は少ないので、七瀬にとっては印象深い生徒さんなのだ。今朝もスタジオで会っている。
レッスンの帰り際にいつも彼のスーツスタイルは見ているが、スタジオの外で出会うとまた新鮮だ。
背がひときわ高く、前髪をかきあげたアップバングが彼の鋭く引き締まった顔立ちを引き立てている。
青山近辺には大企業のオフィスも多いし、値踏みするつもりは毛頭ないのだが、誂えたとしか思えないスーツやぴかぴかに磨かれた靴から、エリートの雰囲気がふんぷんと漂っていた。
宗吾よりもいくつか年上だったはずだが若々しく、内面の落ち着きが外見にも如実に表れている。
「ここ、座ってもいいですか?」
「あっ、どうぞ。……みっともないところ、見られちゃいました?」
彼氏との揉め事を生徒さんに目撃されてしまうなんて、かなり恥ずかしい。
「すみません、のぞき見趣味があるわけじゃないんですが、七瀬センセーが入って来たからつい注目してしまいました」
さっきまで宗吾が座っていたソファに腰を下ろした陣は、ウェイターを呼んで先客の飲みかけだったグラスを下げさせると、自分のグラスを掲げた。