そのモラハラ彼氏、いらないでしょ? ~エリート御曹司の略奪愛
第2話 置き去りにされて、福が来た。
「ゆくゆくは七瀬と結婚したいし、君には俺を支えてもらいたいと思ってるんだ。ヨガは趣味にしたらいいんじゃないか? いつでもどこでも出来るのがヨガのいいところなんだろう? 家事育児の合間にいくらでも家の中でできるじゃないか」
「え、でも……私はヨガを仕事として生涯続けていきたいと思ってる。それで私が幸せでいられれば、その方が結果的に宗吾さんにもいい影響を与えられると思うから――」
「屁理屈ばかりだな! 自分の幸せだけを追求して、俺のことはおざなりでいいと?」
席を立った宗吾の声が店内に響き渡り、静かな店内がさらに静まり返る。
それを見てバツが悪くなったのか、宗吾は自分のコートを手にすると、足早に店から出て行ってしまった。
「あ――」
追いかけようかと迷ったが、まだ料理を注文したばかりだ。なんという居心地の悪い場所に置いていってくれたのだろう。
さっき、宗吾の後ろの席でドン引きしていたカップルの女性が、こそっと七瀬にささやいてきた。
「あの、余計なお世話かもしれませんけど、結婚は考えた方がいいですよ」
「お騒がせしてすみません」
七瀬は苦笑しながら周囲の客にぺこっと頭を下げ、泡がなくなりかけているビールに口を付けた。
一年くらい前までは、七瀬の仕事を応援してくれていたのだが、近頃は七瀬があちらこちらに仕事で飛び回っているのが気に入らないらしい。
当初は大好きな宗吾のため、家賃も彼が七割くらい負担してくれているからと、喜んで家事を引き受けていたところもある。
しかし近頃では早朝レッスンの日にお弁当を作れないと不機嫌になったり、地方スタジオのワークショップのために遠征することも、咎められることが増えた気がしている。
宗吾のことは好きだが、どう説明すればわかってもらえるだろう。
「え、でも……私はヨガを仕事として生涯続けていきたいと思ってる。それで私が幸せでいられれば、その方が結果的に宗吾さんにもいい影響を与えられると思うから――」
「屁理屈ばかりだな! 自分の幸せだけを追求して、俺のことはおざなりでいいと?」
席を立った宗吾の声が店内に響き渡り、静かな店内がさらに静まり返る。
それを見てバツが悪くなったのか、宗吾は自分のコートを手にすると、足早に店から出て行ってしまった。
「あ――」
追いかけようかと迷ったが、まだ料理を注文したばかりだ。なんという居心地の悪い場所に置いていってくれたのだろう。
さっき、宗吾の後ろの席でドン引きしていたカップルの女性が、こそっと七瀬にささやいてきた。
「あの、余計なお世話かもしれませんけど、結婚は考えた方がいいですよ」
「お騒がせしてすみません」
七瀬は苦笑しながら周囲の客にぺこっと頭を下げ、泡がなくなりかけているビールに口を付けた。
一年くらい前までは、七瀬の仕事を応援してくれていたのだが、近頃は七瀬があちらこちらに仕事で飛び回っているのが気に入らないらしい。
当初は大好きな宗吾のため、家賃も彼が七割くらい負担してくれているからと、喜んで家事を引き受けていたところもある。
しかし近頃では早朝レッスンの日にお弁当を作れないと不機嫌になったり、地方スタジオのワークショップのために遠征することも、咎められることが増えた気がしている。
宗吾のことは好きだが、どう説明すればわかってもらえるだろう。