『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!

「二人とも、気を付けるのですよー! 最近、治安が悪いみたいだから」

「あたしなら、だいしょうぶよ。だって……」

 ロレッタはドレスの裾を掴んでくるりと一回転する。アースカラーを基調にした服装で、華やかな金髪を隠すように帽子を被っていた。

 今日は父親にも内緒の、お忍びのお出かけなのだ。
 公爵家の者だと悟られないように、全員が地味な格好をしていた。

 レックスもロレッタも、久しぶりの王都の街並みにはしゃいでいた。乳母は二人を外に連れ出すのが面倒だったので、屋敷から出ることがほとんどなかったのだ。

「ぼく、アレたべたい!」

「きゃあ! かわいいブレスレット!」

 双子はキョロキョロと周囲を見回しながら、楽しそうに寄り道しながら歩いていた。数歩後ろを歩くキャロラインは、にこやかな顔で二人を見つめている。

(いつか旦那様も一緒に来られるといいですわねぇ。おスマホがあればお子たちのおムービーを撮れますのに!)

 なんてことをしみじみと考えていると、

「喧嘩だ、喧嘩だー!」

 一行が歩く少し先で、何やら騒ぎが起きていた。
 キャロラインたちも驚いて騒ぎのほうに視線を向ける。
 護衛のあいだで緊張が走った。奥様たちを守ろうと喧嘩の起こっている方角を注意していると……、

 ――ドン!

「ぎゃっ!」

 何者かが勢いよくキャロラインにぶつかってきた。

< 110 / 132 >

この作品をシェア

pagetop