『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!

 その時。

「おいでー。おいでー」

 双子の後ろから潰れたソプラノみたいな甲高い声が聞こえた。
 びっくりして二人が振り返ると、

「坊や、おいでー」

 建物の角から双子と同じ大きさくらいのウサギのぬいぐるみが彼らを手招きしていたのだ。

「うさちゃん!」

「おいでー」

 レックスはとてとてとウサギに向かって走り出す。

「あっ! ダメぇ!」

 ロレッタも慌てて弟の後を追った。
 彼女はウサギに抱き付こうとする弟を間一髪のところでつかんで、怪しいぬいぐるみと距離を取った。
 ウサギの陰で人が隠れて操っているのを見抜いたのだ。

「しらないひとに、ちかづいちゃダメ!」

「坊や、おいでー。お菓子があるよー」

「おかしー!」

 しかしレックスは姉の忠告など聞いちゃいない。もう目の前のウサギのぬいぐるみとお菓子に夢中だった。

「チョコレートもあるの?」

「チョコレートのお山があるよー。お菓子のお家もあるよー」

「ぼく、おかしのおうちにすんで、チョコレートのおやまであそぶ!」

 レックスはロレッタの手を振り払って、フラフラとウサギのもとへ歩いていく。

「レックス! ダメよ――もごもご」

 次の瞬間、ロレッタの背後から何者かが現れて、大きな手で彼女の口を塞いだ。

「おかしー! わっ!?」

 同時に、レックスはウサギの後ろに隠れていた人間に捕まえられて、麻の袋に入れられてしまった。


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