『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!
「「バーバラ!!」」
彼らの前に現れたのは、バーバラ・スミス伯爵夫人――生まれた時からの二人の乳母だった。
「どうして、バーバラがここにいるの?」
「あんたがやったの!? はやく、あたしたちを、もとのばしょに、つれていきなさい!」
「はっ」
元乳母は二人を小馬鹿にするように、大きく鼻を鳴らして笑った。
「相変わらず生意気なガキどもだねぇ。本当に、その顔を見るだけで腹が立つったらありゃしない」
「っ……!」
自分たちの知っている乳母とは様子が違っていて、双子は戸惑った。
身体を刺すような、冷たい雰囲気。彼女の視線はどこにも感情がこもってなくて、ゾクリと背筋が凍った。
特に、ロレッタはバーバラの変化にショックが大きかった。身体中にビリビリと電撃が走るみたいに、指先まで麻痺をしていく。
父親から話は聞いていた。バーバラは悪い奴だった、って。
双子のお金をだまくらかして盗んでいたり、双子に悪いことを教えたり、過去の『おかあさま』たちも意地悪で追い出した、って。
父に言い聞かされて、頭の中では分かっていた。
でも、実際にバーバラの凍えるような冷たい双眸を前にして、心の奥に押し込んでいた悲しみや失望や、いろんなものがごちゃ混ぜになって溢れてきて。