『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!

「うぅっ……」

ついにロレッタの瞳から、(せき)を切ったように涙があふれていく。
 たとえ騙されていたとしても、長年慕っていた人からの裏切りという事実は、小さな彼女の心には重すぎた。

「お、おねえさま?」

 レックスは慌ててポケットからハンカチを出して、姉の涙を拭う。

「っつ、ふえぇ……」

「どうしたの? なかないで?」

 一瞬、弟も姉に釣られて泣きそうになったが、今ここで泣いたらいけないと本能で感じた。

「おや? 普段は偉そうにしているくせに、もう泣くのかい? 天下の公爵令嬢様が情けないねぇ」

「っ……ひっく……」

 いつも勝ち気なロレッタは、言い返せなかった。涙だけがぽろぽろとこぼれる。
 姉を代弁するように、レックスが口を開いた。

「バーバラ、どうして、そんなにいじわるをいうの? ぼくたちのことを、きらいになったの?」

「は……」

 レックスの質問に、バーバラの表情が消えた。
 次の瞬間。

 ――バチンッ!

「うわぁっ!」

「レックス!」

 出し抜けにバーバラが隠し持っていた鞭で、彼の頬を()ったのだ。

 べちんと尻もちを付くレックス。驚きと怯えの混じった顔で元乳母を見上げる。
 すると、目を剥いて悪魔のような形相をした女が、勢いよく怒鳴り付けてきた。

「うるさいよ! 私は、お前たちのことが大嫌いだったのよ! 初めて会った時からね!」

 再び鞭の音が響く。今度は威嚇するように壊れた家具を叩いた。それでも双子は怯えて抱き合った。
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