『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!

「お前たちのような世間知らずで我儘(わがまま)な貴族のガキは、クソ喰らえだ!」

「きらいだったら……」

 レックスは姉に支えられて起き上がる。なんとか踏ん張って、姉を守るように前に立った。

「きらいだったら、なんで、ぼくたちの、おせわをしていたの?」

「それは、金が入るからさ。公爵家の莫大な金を自由に使えたからね」

 元乳母は、子供相手に開き直っていた。今や彼女の恨みはハーバート家自体に向いていた。

「やっぱり……。おとうさまの、いうことは、ほんとだったのね……」

 ロレッタはガタガタと震えだす。本人の口からハッキリ言われたのが苦しくて、刺されるように胸が傷んで呼吸が粗くなった。
 その様子を、バーバラは楽しそうにニヤニヤしながら眺めている。

「そうだわ。迎えが来るまでまだ時間があるから、ちょいと遊んでやろうかねぇ」

「むかえ?」

「そうだよ。お前たちは、これから外国に売られるんだ。ハーバート公爵家の子供だから、歴代最高額だったよ。私に迷惑をかけたぶん、これくらいは役に立って貰わないとね」

「うられたら、どうなっちゃうの?」

「奴隷として、一生働くんだよ。お前たちは見目が良いから、男娼と娼婦として稼げそうだからねぇ」

 バーバラは口の両端を歪めてニヤリと笑う。人と思えない表情に、双子はぞくりと鳥肌が立った。

「おい、傷は残すなよ。大事な商品だからな」

 その時、入口から大男たちがぞろぞろと入ってきた。どの男も粗野で身なりも汚く、騎士とは違った荒っぽい強さを持っているように感じた。

「大丈夫だよ。子供はすぐに回復するから」

 バーバラは一瞬だけニコリと笑みを浮かべる。
 その直後。

 ――バチンッ!

「うわあぁっ!」

「きゃあっ!」

 今度はレックスの二の腕を鞭で殴った。自然と涙が溢れてくる。
 熱くて、痛い。
 でも、泣いていたら駄目だと思った。
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