『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!
◇
「いたっ!」
「レックス!」
もう何度目かも分からない鞭の鋭い音が響く。レックスはロレッタを庇って、自発的に前へ出て攻撃を受けていた。
父親と約束をしたのだ。
騎士たるもの、か弱き女性を守らなければならないと。
彼は満身創痍になりながらも、継母たちに届くと信じて、助けを求め続けた。
叩かれても、叩かれても、声を張り上げる。
「全く……。前から頭の悪いガキと思っていたけど、まさかここまで馬鹿だとはねぇ」
叫び声の本当の理由を知らないバーバラは、不快感をあらわにしてレックスを見下ろした。意味のない雄叫びを続けている子供が、哀れにさえ思った。
「いいかい? ここは、王都から馬車で半刻は離れているんだよ。いくら叫んでも、見つかりっこない」
「そんなことないやいっ!」
「やれやれ……。もう面倒だから黙って貰おうかねぇ……」
バーバラが鞭ではなく、ぐっと固く拳を握った折も折。
――ドッゴォォンッ!!
「そんなことありませんわぁっ!!」
耳をつんざくような爆音が鳴り響く。
双子たちの背後の壁を突き破って、ドラゴンの頭と、それを伝って地上に舞い降りた――……、
キャロラインがやって来たのだ!
「……」
あまりの常識外の破壊力に、その場にいる全員が大きく目を見開いて口をぱくぱくさせている。
少しして、最初に声を上げたのは……。
「おかあさまっ!!」
姉の、ロレッタだった。