『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!





「いたっ!」

「レックス!」

 もう何度目かも分からない鞭の鋭い音が響く。レックスはロレッタを(かば)って、自発的に前へ出て攻撃を受けていた。

 父親と約束をしたのだ。
 騎士たるもの、か弱き女性を守らなければならないと。

 彼は満身創痍になりながらも、継母たちに届くと信じて、助けを求め続けた。
 叩かれても、叩かれても、声を張り上げる。

「全く……。前から頭の悪いガキと思っていたけど、まさかここまで馬鹿だとはねぇ」

 叫び声の本当の理由を知らないバーバラは、不快感をあらわにしてレックスを見下ろした。意味のない雄叫びを続けている子供が、哀れにさえ思った。

「いいかい? ここは、王都から馬車で半刻は離れているんだよ。いくら叫んでも、見つかりっこない」

「そんなことないやいっ!」

「やれやれ……。もう面倒だから黙って貰おうかねぇ……」

 バーバラが鞭ではなく、ぐっと固く拳を握った折も折。

 ――ドッゴォォンッ!!

「そんなことありませんわぁっ!!」

 耳をつんざくような爆音が鳴り響く。
 双子たちの背後の壁を突き破って、ドラゴンの頭と、それを伝って地上に舞い降りた――……、

 キャロラインがやって来たのだ!

「……」

 あまりの常識外の破壊力に、その場にいる全員が大きく目を見開いて口をぱくぱくさせている。
 少しして、最初に声を上げたのは……。

おかあさま(・・・・・)っ!!」

 姉の、ロレッタだった。
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