『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!
「――ところで、キャロラインは?」
食堂を見渡すが、彼女の姿はどこに見えなかった。ここにいるのは、いつもの三人の家族と、いつもの使用人だけだ。
ハーバート公爵は多忙な日々を送っている。朝早く屋敷を出て夜も遅く帰るので、家族が顔を合わせる機会が中々なかった。
だから、たまに早く帰宅した日は、こうやって家族でゆったりと夕食をとるのだ。
「あの女なら、おへやにいるわ」
ロレッタが済まし顔で答える。
「家族の晩餐なのにか?」
「そうよ、おとうさま。あの女は、あたしたちといっしょに、食べたくないんですって! まったく、イヤな女よね!」
ハロルドはみるみる困惑顔になる。貴族としての義務を果たすのか、果たさないのかよく分からない。
執事長からは子供たちともよく関わっていると聞いているが、実はまだ打ち解け合っていないのだろうか。
「ちがうよ!」
父の疑念を掻き消すように、レックスが大声で言った。
「おかあさまは、おねえさまに、おいだされたんだ!」
「ちょっと! チクらないでよ!」
「ロレッタ、なんだその令嬢らしくない言葉遣いは。しかも嘘をついたのか?」
「おねえさまは、おかあさまに、『家族じゃないからはいっちゃダメ』って言ってた」
「レックス!」
「おかあさまがウソはついちゃダメだって言っていたよ」
「あんたねぇっ!」
激昂したロレッタが弟に掴みかかると、すかさずハロルドが二人を引き離した。
「ロレッタ、嘘はついちゃ駄目だぞ。それに、意地悪もしてはいけない」
「なによっ! おとうさまだって、このまえ一人だけチョコを食べてたのに『食べてない』って、あたしたちにウソついたじゃない!」
「なっ……!?」ハロルドは大きく目を見開く。「なぜ……それを……」
「あたし、知ってるんだから!」
「えぇ〜っ!! おとうさま、ずる〜い!」
レックスもぷくぷくと頬を膨らませて抗議モードに入る。
「ちがっ……。あ、あれはだな、子供は食べたらいけないチョコだったんだ。アルコールが入っててな。お前たちには毒なんだよ」
ハロルドはウイスキーボンボンが大好物だった。
「ずるーい! ぼくもチョコ食べたーい!」
レックスもチョコレートが大好物だ。
彼は父の周囲ぴょこぴょこと飛び跳ねながら抗議を続ける。ロレッタは上手く話がすり替わって、「うしし」とほくそ笑んでいた。
「チョコー! チョコー!」
「分かった、分かった。今度、王都の美味しいチョコを買ってきてやるから」
「やったー! あたしチョコレートケーキがいい!」
「ぜったいだよ! 男どうしのおやくそくだぞ!」
「よし、お父様が約束しよう」
こうして話はまとまって、楽しい晩餐が始まった。食事中も、ロレッタは父親から説教をされ続けていたが。