『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!
仕立て屋たちは深々と頭を下げて辞去した。キャロラインに感謝の言葉を掛けたかったが、乳母の手前、ぐっと我慢した。
なぜなら、子供たちの服もキャロラインのドレスも、先日の注文で半年分は作り終えているからだ。
キャロラインはバーバラに気付かれないように、お茶会以外の服も仕立てさせた。それらは先に公爵夫人のドレスルームに運ばせておいたのだ。
なので全ての商品が納品済み、お代もいただいている。
だから、出入り禁止でも特に問題なかった。
「奥様」
バーバラはすっかり調子に乗っていた。既に決定権は自分にあると勘違いをして、公爵夫人に対して強気に声をかける。
「まだ何か?」
「仕立て屋の処分は終わりましたが、まだ奥様の責任を果たしていないのでは?」
「……と、言うと?」
「彼らを公爵家に呼び込んだのは、他でもない、奥様です! ですので、今回の全ての責任は奥様にございますわ」
またもやピリリとした空気が走った。
乳母はニヤニヤと、女主人は無表情で互いを見ていた。
もう、バーバラはこの屋敷を掌握した気分だ。子供たちは最近は新しい継母に懐いているようだが、そろそろ誰が本物の育ての親か分からせてやらなければならない。
今日は、立場を見せつける絶好の機会だった。
キャロラインは少しだけ考え込む様子を見せてから、
「それもそうですわね。では、わたくしの半年分の予算の半分を返上いたしますわ。そして、それはお子たちの予算に回しましょう!」
「っ……!」
バーバラの顔が、パッと輝く。まさか、あちら側から好条件を言い出してくるとは。とてつもなくラッキーだ。
「双子の予算管理は今は乳母の仕事ですわよね? あとは任せますわ」
それだけ言ってキャロラインは子供部屋から出て行った。
(私に負けたのが悔しくて逃げるのね……!)
それは乳母が女主人に完全勝利を遂げた瞬間だった。
――と、バーバラは思い込んでいた。