『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!



「お子たち〜! お茶会は楽しんでいますかぁ〜っ!?」

 その時、もう慣れ親しんでしまった甲高い声が、にわかに二人の頭上に響いた。

「おかあさま!」

 すると、たちまちレックスの顔が綻んで、

「げっ! フォレットこうしゃくれいじょう!」

 ロレッタの顔がくしゃりと歪んだ。


「お友達とは楽しく遊んでいますの? ――あら?」

 キャロラインはレックスの涙のあとに気が付く。すかさずハンカチを出して、優しく拭った。

「おかあさまぁ〜!」

 レックスは安堵と嬉しさのあまり継母にしがみつく。キャロラインは「もう大丈夫よ」と彼の頭を撫でた。

「あんた! なにしにきたのよ!」

「お二人を見守りに来たのですわぁ〜!」

「はぁっ!? そんなの、いらないわっ! かえりなさいっ!」

「あらぁ〜、お継母様(おかあさま)が来て嬉しいのね〜」

「なっ、なにいってんの!? バッカじゃないの!?」

 キャロラインはぐるりと周囲を見回して、一瞬で今の状況を把握する。

 賑やかな場所から遠ざかり孤立した双子、イライラと怒っている姉と、さっきまで泣いていた弟。
 乳母は遠くから女主人のことを憎々しげに睨み付けている。
 そして好奇心を隠せずに、遠巻きにこちらを見ている貴族の子供たち。

(可哀想に……。この子たちは、コミュニケーションのやり方をまだ知らないだけなのよね)

 貴族に社交は付きものだ。それは屋敷という小さなコミュニティーから始まって、少しずつ世界を広げていく。子供たちは、自身の経験を重ねて社交界での振る舞い方を覚えていく。

 でも、一人の力だけでは限界がある。そこをサポートするのが、両親であり、乳母や家庭教師であった。

 ハーバート公爵は多忙で、双子の実の母親はこの世にいない。となると、二人を教育すべき一番の人物は――乳母のバーバラだ。

 しかし屋敷内や今日の様子を見るに、バーバラには全くその気がないようだ。
 ……いや、教育というより支配しようとする努力は見られるが。

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