『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!
「あら、旦那様ではありませんか! ご機嫌ようですわぁ〜」
あまりの大声にビクリと肩を揺らした子供たちとは対照的に、キャロラインは今も冷静にくるくると傘の上のボールを回していた。
「わたくしのワンマンショーの邪魔をしないでくださいまし!」
余裕ありげにむぅっと頬を膨らませている。
そんな妻のケロリとした様子にハロルドはため息をついて、
「全く……。心配して来てみたら……。噂通りの紛う方なきパーティー荒らしだな、君は」
「今日のわたくしはエンターティナーですわ! お子たちの最高のエンタメを見せているのです!」
「帰るぞ。人様に迷惑をかけるな」
「――では、旦那様。どうぞっ!」
「むむっ!?」
キャロラインはボールが回り続ける日傘を、ハロルドにひょいと手渡した。
「お、おいっ! どうするんだ、これ!」
「ぐるぐるですわ、旦那様〜」
途端に傘が傾いて、ボールが宙に転げ落ちそうになる。子供たちの落胆の声。
悲しげな叫びにハロルドの胸がズキリと傷んで、
「ほっ!」
体勢を整えて、再びボールを軌道に乗せた。
「わぁぁ〜っ!」
すると、消え入りそうだった声に活気が戻る。子供たちの笑顔に、彼は胸を撫で下ろした。
――ころころころころっ!
ボールは綺麗な円を描いて回り続ける。
「凄いですわ、旦那様! 上手く回せるようになるのに、わたくしでも1時間はかかりましたのに」
「ふっ、まぁな」と、ハロルドは得意げな顔をして答える。
彼は国の軍隊を任されているだけあって、運動神経は他の追随を許さないと自負していた。
「ではっ! もう一個いってみましょ〜!」
「はぁっ!?」
ハロルドが目を見開いた次の瞬間、キャロラインは隠し持っていた2個目のボールをひょいと日傘の上に投げた。
「ややっ!」
2つ目のボールが傘でぶつかる。一瞬だけバランスが崩れ落下しそうになったが、ハロルドの見事な傘捌きで2つの軌道はだんだんと安定しはじめた。
子供たちがまたもや湧き上がる。キャロラインもフンフンと興奮しながらこの光景を見つめていた。
「初めてで2つのボールを回せるなんて、さすが国一番の剣術の持ち主ですわぁ〜!」
「これくらい朝飯前だ」と、すっかり得意げなハロルド。
彼は今ではこの状況を楽しんでいた。公爵の自分が芸を披露して子供たちを笑顔にする……なんて滑稽で素晴らしいことだろうか。
「皆様ぁ〜〜〜! いつもより多く回しておりますわぁ〜〜〜っ!!」
「「「わあぁぁぁぁぁ〜っ!!」」」
今日一番の拍手喝采が庭中に響き渡ったのだった。