『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!

「そんなことありませんわ」

 その時、キャロラインがふっと微笑みながら言った。
 ハロルドははっと息を呑む。妻の微笑が、とても美しいと感じたのだ。

「あの子たちは、いつでも旦那様のことが大好きですわ。尊敬しているし、働き過ぎだと心配しているし、それに……」

 キャロラインは、じっとハロルドの顔を見た。

「それに、あなたのことを、本当に誇りに思っておりますわ。だから、心配なさらないで?」

 ハロルドは大きく目を見張った。妻の言葉が、優しく胸に浸透していくのを感じる。
 嬉しさと温かさと、これまでにない感情が浮かんで、なんとも言えない気持ちになった。

「それに、これまでを悔いているのなら、これからを変えればいいのですわ。人はいつだって変わることができますから」

「そうだな……」

 また沈黙が訪れる。でも、なんだか心地よい静けさだった。

「へっくし!」

 次の瞬間、キャロラインの可愛らしいくしゃみが沈黙を破る。
 すると、

「っ……!」

 ハロルドが、自身の上着をふわりと彼女の肩にかけた。

「だ、旦那様……?」

 キャロラインはほんのり頬を赤く染める。上着には夫の熱がまだ残っていて、ちょっと照れくさかったのだ。

「ここは冷えるな。部屋に戻ろう」

 ハロルドは義務的な結婚式以来、初めて妻をエスコートした。
 あの時は意識をしていなかったが、彼女の手は思ったより小さくて。

 そんな彼女が、子供たちのために一生懸命頑張っていると思うと……その手が愛おしいと初めて感じた。


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