『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!


 侯爵令嬢キャロライン・フォレットは、グローヴァー王国の王太子スティーヴンの婚約者だった。
 彼女は初めての顔合わせでスティーヴンに一目惚れをした。それ以降、彼が彼女の人生の全てになったのだ。

 しかし、王太子のほうは違っていた。彼は高飛車で傲慢な婚約者のことを疎ましく思っていた。
 そんなとき、仲間内のお茶会で出会った、男爵令嬢ナタリー・ピーチに一目で恋に落ちたのだ。

 そしてナタリーもまた、彼に一目惚れをしたのだった。二人が特別な関係になるのに、そう時間はかからなかった。

 キャロラインはナタリーに嫉妬をして、手下の貴族令嬢とともに嫌がらせをはじめた。
 さすがに犯罪じみたことは行わなかったが、身分の差を武器に何度も社交界で男爵令嬢を辱めた。

 ただ、男爵令嬢は貴族としての常識も持ち合わせていなかったし、王太子の威光を傘に着てやりたい放題だった。だから他の貴族令嬢たちは、侯爵令嬢の味方だった。

 嫌がらせに気付いた王太子が、「キャロラインは王太子妃に相応しくない」と、水面下で婚約破棄の準備を進めていたのだ。
 ……そこに、ナタリーの計算が混じっていたかは分からないが。
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