『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!
「おやおや。仲が良いねぇ、お二人さん」
その時、ハーバート夫妻の背後から、楽しそうに弾んだ声が聞こえてきた。
「ルーク!」
振り返ると、そこには豪華な礼服を着た美丈夫が立っていた。
ハロルドと同じくらいの年齢で、体格も同じくらいに逞しい。
ハロルドの輝くようなホワイトブロンドとは対照的に、彼の髪は妖艶に黒光りし、赤い瞳が全てを吸い込みそうだった。
「ルーク、来てたのか」
彼の名前はルーク・グローヴァー。王弟だ。
ハロルドと同い年だが、まだ独身を貫いている。「モテる男は一人の相手を選ぶのが困難なんだよ」と豪語しているものの、実のところは王位継承権の争いに妻子を巻き込むのを避けたかったのが理由だ。
この国も、いろんな欲望が渦巻いているのである。
幼い頃からの親友の登場に、ハロルドの頬の筋肉がほぐれた。
「紹介がまだだったな。妻のキャロラインだ。――キャロライン、こちらの方はルーク・グローヴァー王弟殿下」
「キャロライン・ハーバートと申します。ご機嫌よう」
「あぁ、よろしく」
ルークは親友の妻の顔を見て、ニヤリと笑った。
「ついに自慢の奥さんを見せびらかしに来たか」