『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!
「おいおい。それは、暴君と変わらないんじゃないか?」
少しして、沈黙を破ったのは王弟のルークだった。彼は騒ぎを聞きつけて、親友が心配になって戻ってきたのだ。
「叔父上!」
普段は飄々とした彼は、珍しく真剣な顔をしていた。
「スティーヴン……。さっきから聞いてみれば、明らかにお前の言い分のほうが矛盾している。確かに王族に理論武装は必要だが、今のお前のは駄々っ子と変わらない」
貴族たちから失笑が起こる。彼らから見ても、王太子の姿はただのワガママな子供だった。
「で、ですが、私は――」
「これ以上王族の権威が落ちる前に、公爵夫人に謝罪をしなさい。今すぐ」
「っ……!」
圧迫してくるような双眸が、王太子を捉えた。にわかに血の気が引いて凍り付く。それは彼には未だ備わっていない本物の王族の威厳だった。
「ナタリー……」
ぎこちない沈黙のあと、スティーヴンは掠れた声で恋人を呼ぶ。
そしてヒソヒソと一言二言話したら、ナタリーはぶすっと不貞腐れた顔をしてキャロラインの前へ出た。
「……申し訳ございませんでした」
礼儀として、深く頭を下げる。でもそれは一瞬だけで、すぐにプイと顔をそむけて王太子の後ろに隠れた。
――パンッ!
淀んだ空気を浄化するように、ハロルドが大きく両手を叩く。きらびやかな夜会の再開の合図だ。
「過去のことを互いに謝罪して、これでわだかまりもなくなりましたな。我々の間には、もう何の問題もございません。――ですよね、殿下?」
「……あぁ」
王太子は己の負けを認めたくなくて、足早にその場を去っていく。今宵の主役になるはずの男は、実に惨めな姿を晒していた。