それらすべてが愛になる
 「君もしかして、最近入った経営企画課の子?」

 「はい、工藤といいます」

 思いがけず話しかけられて、清流は頭の中で相手が誰だったか思い出そうとする。
 配属されてすぐの頃、仕事上関わりのある社員を覚えるために社員台帳を見たのだが、咄嗟に思い出せなかった。

 「事業推進部の倉科だ。ちょうどよかった、少し前に経営企画に内線をかけたんだが誰も出なくて」

 「あ、ちょうど打ち合わせや外に出ていたメンバーもいて、誰もいなかったのかもしれません」

 「そうだったか。急ぎで悪いんだが経営企画課が出した資料で聞きたいことがある。今、時間は取れる?」

 「は、はい、私でよければ」

 倉科に促されて、そのまま事業推進部の島へと向かった。
 自分のような見慣れない人間がいるからか、通りすがりの社員たちが物珍しげにチラチラと見る視線を感じる。

 倉科は近くの四人掛けのオープンスペースに清流を誘い、席に着いた。
 開いたパソコンの画面には見覚えのある資料が映っている。

 「この販促費の投資利益率の見方で聞きたいんだが…」

 これは今週の初め、勉強がてら未知夏の仕事を手伝ったものだ。
 メンバーの協力で洸にダメ出しされた資料の修正に目処がついて、少しゆとりができたときに未知夏に計算方法を教わっていた。

 倉科の話を聞くと、どうやら見たいターゲットが上手く表示できないらしい。

 そこで元の資料をローカル環境にコピーし、ピンポイントでデータを何パターンか絞って調整したあと、パレート図も追加した。

 「なるほどな、これで見やすくなった。ありがとう」

 「いえ、お役に立ててよかったです」

 実際に資料を見る現場の人の声は貴重だ。
 今度から需要のありそうなパターン別も追加してもいいかもしれない。

 戻ったらメンバーに相談しようと考えていると、倉科課長を呼ぶ一人の男性社員が小走りでやってきた。

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