それらすべてが愛になる
 「あの、今箕輪化学の方がお見えになっていて、部長が倉科課長にも応接室に来てほしいと」

 「はぁ…なんで俺まで」

 「あと秘書課に今誰もいないんですけど、お茶出しどうしましょう?」

 そう言って困ったように眉を下げる。倉科課長を前にしたときの雰囲気から清流と同じくらい、一、二年目の若手社員のように見えた。

 「あの、来られたのって専務の田嶋さんですか?」

 清流の問いかけに、そうですと男性社員が大きく頷く。

 「お茶出し、よければ私がやりましょうか?」


 応接室の場所を確認してから、さっきまで立ち聞きしていた給湯室へと走った。
 電気ポットにお湯を入れようとして、この前未知夏が言っていたことを思い出す。

 『もしかして専務の田嶋さん?あの人無類のコーヒー好きで甘党だから、コーヒーに合うお菓子がいいんじゃない?』

 (無類のコーヒー好きで、甘党…)

 清流はシンク横のコーヒーメーカーのコンセントを挿して電源を入れる。
 マンションのキッチンにあるコーヒーメーカーと違いはあるものの、あの家で使い慣れているせいか使い方は分かりそうだ。

 (ここにお水をセットして、コーヒーの粉は…)

 戸棚にあったコーヒーの瓶を取る。
 蓋を捻るがきっちり閉められた蓋はまったく開かない。深呼吸しては力む作業を何度か繰り返すと、だんだんと手が痛くなってきた。

 赤くなり熱を持った手のひらをぶんぶんと振っていると、後ろから伸びた手に瓶がさらわれる。

 驚いて振り返ると、背後に洸が立っていた。

 「…えっ!?加賀城さん、何でここに」

 「それはこっちの台詞だ」

 洸は不機嫌な顔のまま、瓶の蓋を簡単に緩ませて開けると清流に差し出す。

 「ありがとうございます…」

 コーヒーの瓶を受け取り粉を入れてコーヒーメーカーのスイッチを押すと、コポコポと音を立て始めた。

 「で?ここで何やってんだ」

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