それらすべてが愛になる
 全部を一から説明してもらうのは時間が掛かりすぎるので、用語の解説を読んでも理解できないものについて教えてもらうことにした。

 まずは繊維のカテゴリーを目でなぞっていく。

 主に衣服に使われる合成繊維やセルロース系、再生繊維。それ以外に炭素繊維や弾性繊維など素材系で使われるものもあり、これだけ種類があるのかと単純に驚いた。

 「最近は環境配慮の流れで再生繊維の種類もシェアも増えてきてる」

 「ウールはセルロース系ですか?」

 「羊毛はタンパク系だ。で、紡糸したままの合成繊維の糸を生糸《なまいと》、延ばして加工したものが加工糸と言って、」

 「え、これ『きいと』と読むんじゃないんですか?」

 「生糸《きいと》は絹に使う製糸していない繭糸を集めた糸のことで、意味が違う」

 なるほど、と納得し説明された内容を書き込む。
 その合間に隣りに座る洸の様子を盗み見た。

 左手は頬杖を付き、右手はペンで用語を指し示しながらすらすらと説明していく。まるで教師と生徒。学生時代の居残り授業のようだ。

 教えてもらえるのはありがたいのだけれど、それならマンションでもよかったように思える。

 家でも仕事の話ができるのがこの同居の数少ない利点なのに、こうしてわざわざオフィスまで来る必要があったのだろうか。

 洸はただでさえ多忙で今週も会議や出張続きだったのにと思いながら、清流は洸の説明に遅れないよう耳を傾ける。

 正直なところ、今週は清流自身も少し疲れていた。
 仕事面だけでなく、一昨日の歓迎会の夜が楽しくて寝不足気味なのが尾を引いているのかもしれない。

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