それらすべてが愛になる
 「…で、それから物流費、ここは商品原価にもろに影響するところな。送料と海外生産の場合は輸入費用、倉庫で保管する場合の保管料と作業料。作業料は倉庫でのラベル貼りの他に個装のピッキング費用と―――」

 唇から淀みのなく流れる聞き慣れない用語も、洸の低めの声と合わさると不思議と聞いていて心地がいい。洗練されたプレゼンやスピーチとはまた違う、気づいたら自然と自分の中に染み込んでくるような、そんな声だ。

 いつの間にか清流はメモを取る手を止めて、その声に聞き入っていた。

 「おい」

 次の瞬間、何かで叩かれる衝撃が頭に走る。

 はっと目を開いて視線を上げれば、涼しげな目元に不機嫌さを湛えた洸と目が合った。

 「人が親切に教えてやってるのに寝るとはいい度胸してるな?」

 自然と自分の目蓋が下りていたことに、この瞬間まで気づいていなかった。

 「ち、違いますよ、別に寝てたんじゃなくて!」

 「清流は目を閉じたまま文字が読めるんだな、知らなかった」

 「えっと、そうではなくて、ただ…」

 「ただ?」

 「こ、子守唄みたいで…」

 実際に目は閉じていて――寝ていると疑われても仕方がないけれど、清流の意識ははっきり覚醒していたし、洸の言葉も一言一句聞いていた。

 こっそり録音をして持ち歩けたら歩きながら覚えられるかもしれない、なんてことを本気で考えながら聴き入っていたら、自然と目を閉じてしまっていた。

 「…は?」

 正直に話すと、予想外の理由だったのか途端に洸は虚をつかれたような表情になった。

 眉間を押さえる洸の顔を覗き込もうとすると、顔を逸らされる。

< 109 / 259 >

この作品をシェア

pagetop