それらすべてが愛になる
 維城商事の自社ビルがある周辺は、東京のど真ん中に位置するオフィス街だ。

 それでも大型商業施設や美術館といった名所も多いため、休日でも家族連れや観光客などで人手はむしろ平日より多いくらいだった。

 「加賀城さんってお昼はいつもどうしてるんですか?」

 「大抵は移動先で食べることが多いな。社内にいるときは適当に買うか。だからオフィス近くで食べに出ることは少ない」

 「じゃあ今日は新規開拓ですね」

 駅ビルに行けば確実に飲食店があるだろうけれど、それでは味気ないと二人の意見が一致して、駅とは反対方面へ足を伸ばすことにした。


 しばらく歩くと、歩道で呼び込みをしている女性に声を掛けられる。
 よろしければどうぞ、と渡されたペーパーには『土曜日マルシェ』の文字と楽しげな動物のイラストが踊っている。

 「この先で開催しています、お時間がありましたらぜひ!」

 ペーパーに載った地図上では、場所はすぐ近くのようだった。
 少し進んでビルの角を曲がると、急に視界が開ける。

 そこは、見渡す限り芝生が広がる大きな公園だった。
 まるで高層ビル群の中のオアシスのようで、太陽に照らされた緑の芝生が眩しい。

 「こんな公園があったんですね!」

 「へえ、車で前を通ったことはあるけどこんなイベントやってたんだな」

 公園内に入るとカラフルなタープテントが並んでいて、野菜やパン、スイーツに花などいろいろな物が売られて、どこも賑わっている。

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