それらすべてが愛になる
 普段は下げられていることが多いブラインドが上がっていて、中では難しい顔で仕事をする経営企画部部長の姿が見えた。

 (あー、あれは相当苛立ってるなぁ…)

 洸と倉科は、端的にいえば仲が悪い。
 舞原が見る限り、初めは倉科の方が洸に対してあからさまに当たりが強かった。

 年次が下にも関わらず早々に部長職に就いたことに快く思っていなかったのだろうと勝手に想像するが、洸もそれを分かった上で軽くいなしていた。

 それが最近はどういうわけか、洸の方が倉科を敵視しているように見える。

 洸の考えに反して企業投資の話が進み、役員会議での承認間近なところまで来ているせいか、それとも。

 「倉科さん、どうにか調整がつきそうです。ただ財務部の担当者と連絡がつかなくて…なので最終的に二十分くらいになるかもしれませんが」

 「ありがとう。ある程度根回し済みだからそれくらいあれば十分だ。あとついでで悪いんだが前年同期比のデータに平均伸び率と競合比を追加して、このフォーマットで出してもらえないか?」

 「分かりました、いつまでに…」

 清流は続く言葉を最後まで言うことができなかった。

 パーテーションの向こう側にいたはずの洸が、倉科の差し出したファイルを取り上げてしまったからだ。

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