それらすべてが愛になる
 「人の部下を勝手に使うなって以前も言いませんでしたっけ。それともそんなことも覚えていられないほど多忙なのでしょうか、事業推進部は」

 「ちょっと、加賀城さん…?!」

 「ええ忙しいですよ。元はといえば経営企画、いえ加賀城部長が難癖をつけてこられたからなんですが、ご自分の発言をお忘れですか?」

 狼狽える清流を挟んで、笑顔対笑顔。

 「あ、あの!倉科さん、お昼休み明けにはお渡しできると思うのでそれでもいいですか?」

 「じゃあ十三時ごろに取りに来る。よろしく頼む」

 「来なくていい」

 「ちょっと!」

 倉科は加賀城の言葉を無視して、部屋を出て行った。

 「工藤、こっちのチェック作業が先だ」

 「それはできません、倉科課長に頼まれた方が先ですから。あとそのファイル返してください」

 清流は洸の手から資料の入ったファイルを取り戻すと、仕事がありますのでと言って椅子をくるりと回転させて洸に背を向けた。

 あの部長がやり込められている。
 なかなか面白い光景だ、と舞原はパソコンの画面越しに眺めるも、笑ったことがバレたらどんな火の粉が飛んでくるか分からない。

 あくまでもこの場では傍観者に徹してカタカタとキーボードを打つ。

 清流の意思が変わらないと見ると、洸はため息を吐いて部長席へと戻り、カシャンッとブラインドが下げられる音がした。

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