それらすべてが愛になる
 「おーこわ。清流ちゃん大丈夫?」

 「え?はい、大丈夫です。一時はどうなることかと思いましたけど」

 清流は意外なほど、特に洸に対して物怖じしない。
 これまで配属されては辞めていったメンバーは、要求の厳しさのせいか、洸を前にすると緊張するか怯えるかだった。

 洸の方もどこか一線を引いていたし、辞めたらそれまでとばかりにさっさと次へと切り替えていく冷たさがあった。それなのに、あれはまるで―――

 「ただいまーって、あらどうしたの?」

 打合せから戻ってきた未知夏が、普段と少し違う空気を察した。
 舞原が洸と倉科が繰り広げた静かなバトルの話をすると、未知夏はケラケラと笑う。

 「へぇ、そんな面白いことがあったの?私も見たかった」

 「惜しいことしたっすね」

 「お二人とも笑い事じゃないですから…」

 あの二人に挟まれていた清流にとっては笑い事ではないだろう。疲労感を滲ませる様子に舞原は少し同情する。

 「…しかし、嫉妬って厄介っすね」

 「え?」

 舞原の口から出たここまでの流れとは無縁の単語に、清流は首を傾げている。

 「あれは、自分が優先されなかったことに拗ねてるんじゃないですか?ここは経営企画課ですし、自分がリーダーだから一番じゃないと嫌なんじゃないかと」

 きっとそうですよと頷く清流を、舞原は驚くような心持ちで聞いていた。

 あんなの、どう見ても自分のお気に入りに手を出されたことへの嫉妬で、リーダーのプライドなどという次元ではない。もはや小学生のそれだ。

 「まぁまぁ、清流ちゃんはまだ分からなくていいわよ」

 コーヒーの入ったタンブラーを傾けながら、未知夏だけが笑みを深くしていた。

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