それらすべてが愛になる

10. 想い想われ

 「リストにあるのは全部入れたか?忘れ物するなよ」

 「分かってますって、大丈夫ですよ」

 清流は持ち物の最終確認をしてからスーツケースを閉める。

 清流は今日から一週間、会社の宿泊研修に行く。
 社内で一年目から四年目の若手社員から十数名が選ばれる中で、清流も選ばれて参加することに決まったのだ。

 同じグループ系列の会社からも参加者がいるらしく、講師を呼んでの座学以外にもワークショップやロールプレイングを取り入れた内容も組まれているらしい。
 普段は経営企画課に籠って仕事をすることが多い清流にとって、他の同年代の社員と親睦を深めるチャンスだと、参加が決まってからはかなり楽しみにしていた。

 「あとシンクライアントのバッテリーに、スマホの充電器もな。寝る前でもいいから一日一回は連絡しろよ」

 「意外と心配性ですね」

 「一週間も行くんだから当たり前だろ。ちゃんと連絡しろよ」

 「そうはいっても、同じ都内ですよ?」

 そう言いながらも、分かりましたと苦笑しながら返事をする。

 「加賀城さんこそちゃんとごはん食べてくださいね、あとソファーで寝ちゃダメですよ」

 「分かってる」

 「あとミントの水やりもお願いします」

 「分かってるって、そろそろ出ないと遅れるぞ」

 時計を見ると七時半。
 八時半にターミナル駅に集合なので、余裕を見て早めに出ておこうと思っていた。

 「じゃあ先に出ますね」

 「あぁ、経営企画を代表していってこい」

 「ちょっとそれは重いんですけど」

 行ってきます、と笑顔で出ていく清流を洸も軽く手を上げて見送った。

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