それらすべてが愛になる
 昼休みにコンビニで弁当を買い、フロアの休憩スペースの前を通ると、待ち構えていたかのように未知夏が手招きをした。

 未知夏は周囲に人がいないことを確認して、隣りに並ぶ。

 「加賀城くん、婚約したってほんと?」

 急に話を振られて、洸は一瞬沈黙した。

 「どこで聞いた?」

 「秘書課の子から尋問されたわよ、相手が誰か知ってるんじゃないかって。何度知らないって言っても信じてもらえなくて大変だったんだから」

 よっぽど問い詰められたのか、今ならあの子たち刑事になれるわと疲れたように言う。

 「で、どうなの?」

 「まぁ…本当」

 「へぇ、あんなに逃げ回ってたのに意外。ついに年貢の納め時ってわけね」

 役員とその秘書の口に戸は立てられない。
 未知夏は以前秘書課にいたこともあり、そういう話が耳に入る機会も多く普通の同期以上に事情はよく知られていた。

 「その顔は乗り気じゃない感じ?」

 「……いや、そうでもない」

 それは洸の本心だった。
 自分としては初めからそのつもりで声をかけたが、一緒に暮らすようになってもほとんど気を使うこともない。

 何なら清流がいる生活が普通になってきている今、この生活の延長に結婚があるのなら構わないとすら思っている。

 けれど、清流の方はどうだろう。
 まだ初めの頃のように絶対に嫌だと思っているのだろうか。

 『出ていかないです』

 あのときはそう言っていたが、今すぐ出ていくつもりはないというだけであって、ずっといるという意味ではないのかもしれない。
 もしくは、このまま同居は続けてもいいが結婚は嫌だ、という可能性もある。

 あの言葉がどういう意味なのか、今どう考えているのか深くは聞けていないままだ。もし聞いて断られたら―――

 (断られたら……?)

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