それらすべてが愛になる
 「あー、ソファーに寝ちゃダメですよって言ったのに」

 (…仕方ないだろ、こっちも疲れてるんだ)

 「あ、ネクタイ落ちてる。バッグもひっくり返って中身出てるし。ふふ、几帳面に見えてけっこう適当なところもあるんだなぁ」

 (だからそれは仕方なくだ)

 元はといえばお前がいないから、と責任転嫁しそうになった頭が覚醒してはっと目を開けると、視界に入った華奢な後ろ姿が振り返った。

 「あ、起きました?」

 いるはずのない顔が、こちらを覗き込んでいる。

 もしかしてあれから丸一日近く寝ていたのだろうか。そんなバカなと思って時間を見るも朝の十時前だ。

 「帰るの、夜じゃなかったのか?」

 その予定だったんですけど、と清流はバツが悪そうに笑う。

 「研修自体は昨日で終わりで、今日は一日自由行動だったんです。一週間一緒に研修をしたメンバーと親睦を深めるためにってことみたいで」

 それは知っている。
 自分の代も最終日はそうだった。

 「割引チケットが配られたスカイツリーへ行った人もいますし、あとは浅草とか銀座とか…で、私は仕事の呼び出しがあったことにして帰ってきちゃいました」

 未知夏さんから聞きましたよ、大変だったみたいですね?

 そう言う清流に手を伸ばして、そっと顔の輪郭をなぞる。

 「へ、ちょ、加賀城さん…っ?!」

 途端に顔を赤くして慌てふためく。

 戸惑いと驚きと、でもそれだけではないような。
 いろいろなものを混ぜて溶かしたような、初めて見る顔だ。

 (…こんな顔もするのか)

 「あの、もしかして寝ぼけてます?」

 誰かさんのお陰で頭はすっかり覚醒しているが、清流の勘違いにもうしばらく乗っかることにした。

 腕を自分の方に引き寄せるように引っ張る。

 あっ、という声とともに倒れ込んできた体を抱き枕にしてしまうと、その体勢のままソファーへと寝転がった。


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