それらすべてが愛になる
 「ほ、本当に言っていいんですか?」

 「遠慮しないで言えって」

 「…カニクリームコロッケです」

 そう言うと洸の体がピタリと固まってしまった。
 ほらやっぱり、と見上げると目が合う。

 「分かった……でもしばらく猶予をくれ」

 「あの、本当に気持ちだけで十分ですから」

 「いや、今度絶対作ってやる」

 一度言い出したら引かない。洸も頑固な性格だ。清流は苦笑しつつ、ありがとうございますとお礼を言う。

 いつ実現するのかは分からないけれど、楽しみに待っておこう。
 あまりにキッチンで悪戦苦闘してたら、そのときは自分も手伝えばいい。

 それよりも、まずは今日のお昼ごはんだ。
 料理の話をしていたせいか、清流自身も少しお腹が空いてきた。

 「……あの、そろそろ放してもらわないと買い物に行けないんですが」

 「まだもう少しいいだろ」

 初めから用意していたような答え。
 少し身じろぎをすると、さらに力を込められて動けなくなってしまった。

 「私もお腹空いてきたんですけど」

 「俺は逆に眠くなってきた」

 「もう……」

 どうやら折れる気配がないことを悟ってそっと息を吐く。
 清流はもう一度そっと顔を見上げて、作り物のような綺麗な寝顔に目を奪われた。

 (人の気も知らないで、ほんとずるい…)

 バクバクと打ちつける心臓の音に気づかれないことを祈りながら、清流もまた温もりの中へと微睡んでいった。

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