それらすべてが愛になる
「…なぁ舞原」

「なんですか?」

「お前なら、どうしたら笑う?」

脈絡のない問いに、舞原は虚をつかれた。

「……部長、仕事のし過ぎでおかしくなったんですか?それかこの間の時差ボケが残ってるとか?」

「残ってねえよ」

そもそもシンガポールとは大した時差もない。

「なにで笑うか?んーそうっすねぇ、お笑いの動画見たときとか?…って、人に聞いておいて期待外れって顔しないでくださいよ」

ぽろっと零れるような問いに、立ち入るつもりのなかった思考が働いていることに気づいて洸は無意識に頭を振るが、少し遅かった。


(……あぁ、やっと分かった)


たった一度拒絶されたくらいで、何故こんなにも引きずるのか。

そもそもどうして、服をプレゼントしようなんて思ったのか。


『できた、今入りましたよね加賀城さん!』


思い出すのは、トレビの泉で握ったコインを投げ入れてはしゃいでいたときの、屈託のない笑顔。


あの笑顔が、もう一度見たかった。


直感的に理解すると同時に、
そろそろ認めたらどうだと頭の中で声がする。


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