それらすべてが愛になる
 「……つまり、貴方に迷惑がかかるのを避けるために、工藤さんは自ら出て行ったということですか」

 「手紙にはそう書いてあった」

 唯崎は洸と清流との間の事情は知ってはいたが、それを差し引いても同僚として働く清流はいつも明るく前向きで、何でも吸収しようとする姿勢を好ましく思っていた。

 立て続けに両親を亡くしているというだけでも唯崎にとっては胸が痛むことだが、さらに過去のことで脅されていたとなれば―――これだからこういう手合いは嫌いなのだ。

 「…お前、顔怖すぎ」

 ひととおり目を通し、かつ洸の話を聞いたところで、唯崎の表情は無意識のうちに歪んでいたらしい。茶化すように指摘されるがそれも仕方のないことだ。

 「工藤さんに連絡は?」

 「してみたが繋がらない。会社関連で確認事項があるからと言って人事から実家に連絡させてみたが、戻ってはいなさそうだ」

 「もう二日経ってますよ、本気で探すのなら初動が重要です。人の記憶も時間が経つほど薄れますし情報も流れていきますから」

 何を悠長にしているのか。
 そう問いただしそうになったところを、洸に止められる。

 「闇雲に探してもどうにもならない。もしかしたら誰か知り合いのところにいるのかもしれないが、俺は清流の交友関係も…それ以外もほとんど何も知らない。だから今は出来ることからやりたい」

 洸は一度コーヒーを一口飲む。

< 190 / 259 >

この作品をシェア

pagetop