それらすべてが愛になる
 「この原稿は、この氏原という名刺のやつが調べ上げたものだと思う。清流の戸籍も取ったみたいだが考えられる出所は?唯崎は俺より法律知識があるだろ」

 「戸籍の取得は基本本人か直系親族のみです。工藤さんの場合、すでにご両親も祖父母も他界していて兄弟もいないようなので…」

 「叔父や、叔母なら?」

 「できません」

 「となると、そっち方面じゃなさそうだな」

 それには唯崎も同感だった。本人の委任状があれば代理人でも取得可能だが、清流に委任状を書かせたとは考えづらい。

 「唯崎、お前には昔のツテでも何でも使って、この氏原ってライターを探し出してくれ。どう調べたかは知らないが何らかの不正な手段を使ってるはずだ」

 唯崎はクリップに挟まった名刺を抜き取った。
 フリーライター氏原崇史。唯崎自身には心当たりはない。

 「もしも不正に取得していたなら戸籍法違反、委任状を不正に作成していれば有印私文書偽造罪と同行使罪に該当します。さらにそれらを使って脅したとなれば脅迫罪。このような類いの人間は一度や二度じゃないでしょうから叩けばいくらでも埃が出るはず。上手くいけば実刑にも…」

 「…涼しい顔しながら過激だな」

 法律知識に基づき即座に何パターンかをシミュレーションしてみたのだがまずかっただろうか。

 「いや、頼もしいかぎりだ」

 そう言って洸は一瞬笑った後すっと目を細めた。

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