それらすべてが愛になる
 「工藤さんからの手紙には、他に何か書かれていなかったんですか?」

 来栖に渡しておくよう渡された、報酬の入った封筒を受け取った唯崎は洸に尋ねる。

 「他に?…あぁ、ずっと好きだったと書いてあった」

 「……のろけるか落ち込むか、どちらかにしてもらえませんか」

 洸は少し考えるような素振りをしてから平然と言うので、唯崎は呆れたような視線を送った。

 「ただそっちの方は…手がかりになりそうなものがある」

 「本当ですか?」

 「確証はないけどな」

 それは意外なところからもたらされたものだったのだが、以前唯崎の指摘したように人探しをするなら初動が肝心で、またすべてが遅すぎる可能性もあった。

 「今からでは入れ違いになる確率が高いですね。ただそうなったとしても、いつか再会できる可能性もゼロではありません。工藤さんにそのつもりがあればですけど」

 「…嫌な言い方するなよな」

 「最悪を想定するのが癖になってしまって」

 唯崎がこれまでどんな人生を歩んできたか洸もその断片しか知らない。
 テーブルの上のエスプレッソを飲む唯崎は、何かを(くら)ますように微笑を浮かべた。

 「ではこれから行くんですね?」


 唯崎は先日この部屋で聞いた洸の言葉を思い出していた。


 ―――ただ一人だ

 洸はそう言った。
 短くてシンプルで、それでいて唯一で代わりなどいないことをよく表しているように思えた。

 彼が辿り着いた結論を話す相手は、またこの場所へ戻ってくるのだろうか。


 (この人たちはきっと大丈夫だ)


 なんの確証もないけれど、唯崎はそう思う。

 そうあってほしいと願っている。


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