それらすべてが愛になる

14. 願いの行き着く先

 (…本当に来てしまった)

 半年前にも訪れた異国の空気と風景に、清流は独りごちた。

 イタリアのローマ。
 前回訪れたときは春、今は秋の入り口だ。寒いだろうかと思っていたけれど、今日は少し日差しが強いくらいで過ごしやすい。

 空港からターミナル駅までの乗り換えも、そして今回は宿泊予定のホテルのチェックインも問題なく、清流はようやくほっと胸を撫で下ろした。


 ローマ行きを決めたのは思いつきだった。

 洸と暮らしたマンションを出た後、本当は別のところへ向かう計画だったのだけれど、タイミングよくキャンセルが出ていた一人分の航空チケットを取って飛び乗った。

 どうしてももう一度、洸と出会ったこの場所に訪れてみたくなってしまった。

 ただそれだけのためで一泊しか予定しておらず、滞在時間よりもしかしたら移動時間の方が長いかもしれないくらいだ。

 (…でも、前に進むためにはどうしても必要なんだもの)

 洸に初めて声をかけられた大通り、泊めてもらったホテル。次の日一緒に付き合ってもらった観光名所めぐり。

 洸と辿ったあの日の情景を、辿るように歩きたかった。
 そうして一つ一つを過去の思い出に変えてしまい込めば、進めるような気がする。


 春に来たときよりも混雑していないように思ったけれど、さすが観光地なだけあってやはり観光客は多い。

 チェックインしたホテルから歩いて、洸に呼び止められた通りを歩く。

 ここで偶然声をかけられなければ、お見合いのあった料亭で見かけてもそれっきりで、きっと一生出会うこともなかった。

 (そうしたら維城商事で働くこともなかったわけだから、未知夏さんたちとも知り合うこともなかったんだよね)

 そう思うと人の縁や繋がりの不思議さと、何かが少し違えばまったく違った人生になるのだという危うさに、ほんの少しだけ怖さを感じた。

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